スローであること。ダウンシフトすること。

自然に生きる暮らし術
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僕はかつて一般的なサラリーマンとして働いていたときに求められるものはいつも、

「素早く、効率を上げ、売り上げを伸ばし、技術改革、業務改善をしよう」

時間があれば改善をし、どうすれば安く良いものが作れるのかを考え、尻をムチで叩かれながら最大速度を維持する競走馬のように前だけをみてそれ以外は考える余裕すら与えてもらえない日々を送っていた。

それが我々の住む資本主義経済であり、市場が世界が便利豊かになると信じて利潤追求し続けることを疑う余地もない。
それはあるいは、タイタニック号がいずれ氷山にぶつかることは分かっていながら現実的なものと把握することができず、「氷山にぶつかるぞ、エンジンを止めろ」という者は揶揄され非常識だとみなされる。タイタニックという絶対に沈むことはなく船は前に進むようにできているわけで、前に進まないのであればみんなの仕事がなくなってしまう。
前に進むということがタイタニックの本質だ、ということである。

前に進むしかないという進化主義に狂わされ、その影響でどれほど環境が汚染され、自分自身の首を締めているのかに気づかず、進化、発展、技術開発をさらに進めることで環境汚染を食い止めようとしている。

僕たちが描く未来はどのようなものだったろう?
誰もが子供の頃「近い将来、仕事は全てロボットがやってくれて、僕たち人間はゆっくりと余暇を楽しむ」という想像をしていただろう。

今の現実はどうだろうか。三十年前と比べてたら飛躍的な進歩を遂げ便利な社会を手に入れた。
さて、そんな便利になった世の中で浮いた時間、無駄を削減できた時間はいったいどこに行ってしまったのだろう?

日々、改善改善と今まで3時間かかっていた仕事が技術改革の恩恵により1時間に短縮されて、その削減出来た2時間はまた改善の時間に割り当てられる、売り上げアップのために新たなタスクが割り当てられる。
そう、その手に入れた2時間はさらに将来の投資のために浪費される。

時間ができれば将来のために時間を使い、今現在を生きることを忘れているんだ。
だから、いくら経済が豊かになってもかつて思い描いていた「余暇を楽しむ生活」が来る日なんて存在しないんだ。

進化主義においてはゴールはなく、またいったん立ち止まることが出来ないように仕向けられているのが今の社会のシステムである。

そんな「より速く、より多く」のファースト・アップ主義の走り続ける生活を一度忘れて、いったん立ち止まり、そこからスローに歩き、登っていた階段も今度は一段降りていくダウンシフトの考えがあることを最新知ったのだ。
いや、知ったというか立ち止まることができたから目の前に降りてきたというべきか。

「スロー・イズ・ビューティフル」「減速して自由に生きる:ダウンシフターズ」の2冊に出会ったのは数ヶ月前のことだ。

量と速度を肥大化させた近代社会は当然だが自然に優しいはずがない。
産業時間とも言える速い時間軸に生物時間はついていくことが出来ない。
氷河時代以降何千年という時間のなかで気温の変化に合わせてゆっくりと移動(遷移)してきた樹木たちは当然近代の急速な温暖化のペースについていくことが出来ない。
気温変化のなかで森は一年で最大500メートル移動することができると言われるが過去30年間に平均気温が1度から2度上昇するようなペースの中では一年に5キロもの移動を要求されることになるのだ。自然はそんな速度についていくことが出来ないので敗退していくのみとなる。

つまり森が枯れる。種が絶滅する。自然が不安定化する。ということだ。

毎年、毎月のように過去最高なんちゃらを記録し、「何十年生きてきたけどこんなことは初めてだ」とコメントをする被災した人たちのインタビュー。

ああ、大変だな気をつけなきゃなとしか感じないのだろうか。
ぼくは、そんな災害がある度に感じるのは自然からのこんなメッセージだ。

「もう抑えられないんだ」
「分かってくれよ人間様」
「人間が作り出した文化を破壊しなければ地球が死んでしまう」

自然との共生を忘れて特別な神のような存在だと勘違いをしている。
神だからなんでも出来、科学の力で自然さえ支配できると信じて疑わない。

僕たち人間は生物である。自然の中の一部である。
生物であるからこそ、生物時間の中で生きるべきである、というのがスローライフ、あるいはダウンシフトの生き方、考え方である。

自分の人生において、全速力だった今までの生活から一度立ち止まることが出来た。
そして、これからはゆっくりとした時間軸のなかで生きていくための方法を自分なりに模索しているタイミングだ。
時間をかけて、ゆっくりと正しい答えを出すために自分の考えで生きる力をつけなくちゃいけない。
それが今のタイミングだ。

どこかのタイミングで、僕の意識を変えてくれた著書の中身をもう少し書ければいいなと思う。

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